嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
小さくため息をついたエリカは、反論することを諦めて、また鏡に向かい始める。
「おい…わかったのか?」
「はいはい」
やる気のない相槌を打つエリカの後ろ姿を、俺は複雑な心境で見つめていた。
寧々だけじゃなく、お前のことも心配だから送りたい。
…素直にそう伝えられたら苦労はないが、エリカの今の様子じゃ、俺のことなんて到底受け入れてくれそうもない。
寧々は腰を下ろした俺の隣に座っていたが、突然目を輝かせたかと思うと、エリカに向かって突進していった。
「ママ、ねぇママー!これなに?」
「ちょ、寧々!今押しちゃダメ!!」
「これ貸してっ?」
さすがは女の子。
まだ二歳なのに、すでに化粧品への興味があるらしい。
「ほんと、無理無理っ…!」
「おい寧々、こっちで俺と遊ぼう」
じゃれ合う二人を微笑ましく見ていた俺も、エリカの焦りように慌てて寧々を止めに向かう。
「…あ」
だけど運悪く寧々の手がエリカの腕に当たってしまって、エリカの目尻に惹かれた黒いラインが大きくはみ出してしまった。
「しょうちゃん、ママのかお、おもしろいね」
「も、もー!!寧々ー!!」