嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
変な化粧のまま怒りだしたエリカの姿に、俺は必死で笑いを堪える。
そのまま持っていたスマホのカメラを起動して、何枚か写真に収めてしまった。
「な、何やってんの!?」
「いや、つい面白くて…お前、この写真いる?」
「いるわけないでしょ!!」
「ほら、早く顔直してこい。遅刻するぞ」
「あーもう最悪…」
寧々は自分が何をしたのかよく分かっておらず、おろおろとした様子で洗面所に向かったエリカを見つめていた。
「大丈夫だよ。ママは本気で怒ったわけじゃないから」
「…うん…」
「ほら、さっきのママの顔、すげぇ傑作だろ」
寧々のスマホの画面を見せれば、その表情へ徐々に笑顔が戻ってくる。
「…ちょっと橘マネージャー!さっきの画像絶対消してね!!」
向こうから俺を非難する声が聞こえてくるけど、全く気にしない。
俺はスマホを操作すると、ロック画面の背景をエリカの画像に変えてしまった。
「ほら寧々、これでいつも面白いママが見れるだろ?」
「すごーい」
魔法使ったようにでも見えたのか、寧々は俺に尊敬の眼差しを向けてくる。
「…ね、ねーパパは?」
「……!」
「パパの顔も見れる?」