嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
寧々の口から“パパ”という言葉が出るとは思わなくて、俺は一瞬言い淀んでしまった。
保育園にも行っているんだ。
寧々はもしかしたら、自分にはパパがいないということに、気づき始めているのかもしれない。
「パパは…」
名乗りたいと思ってしまうこと自体、 罪なのかもしれない。
エリカが認めてくれない限り、俺は寧々の父親にはなれないんだから。
「…今は無理だけど、きっといつか見れるようになる」
「…ほんと?」
「うん」
それが、俺の儚くて独りよがりな願いでもある。
しょぼんと俯いてしまった寧々を引き寄せて、膝の上に乗せる。
「それまで俺が、パパの代わりに寧々のそばにいるからな」
「…しょうちゃん…」
だからエリカ。これぐらいは許してくれ。
そのまま寧々をぎゅっと抱きしめれば、小さな手は俺に必死で縋りついてくる。
可愛いを通り越して、もう単純に愛おしい。
エリカと俺を繋いでくれる、唯一の絆。
もし寧々に“パパ”と呼んでもらえる日が来たら。
…俺は幸せすぎて死ぬかもしれない。