嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
俺の誘導に気づき、エリカは俯きがちになって口を結んだまま黙り込んでしまう。
普段強気なくせに、この手の話題にはめっぽう弱い。
こいつのこういうところは、昔から恐ろしい程可愛かった。
「……」
ヤバイ。
もうちょっとからかってやりたいのに、これ以上一緒にいると俺の身体に毒だ。
「相変わらずだな」
「…なにがですか」
「そういうことだけは、可愛い反応するとこ」
「……っ!」
最後にそう言い放って、俺は事務所の入口に向かっていく。
エリカは音を立てながら立ち上がり、より一層顔を赤く染めていた。
俺だって顔には出していないけど、さっきから心臓が壊れそうなくらい脈打っている。
店に出る前、バックヤードの隅で壁に寄りかかり口元を押さえていると、ちょうど店から商品を取りに入ってきた相沢とバッチリ目が合ってしまった。
「……」
「……」
お互い無言で視線を交わしたが、相沢は俺の様子がおかしいことに気づいているらしい。
どこか呆れたような目線を向けられると、とてつもなくいたたまれない気分になってくる。
「…お前ら中学生か」
すれ違いざまにぼそっとそれだけ言われた俺は、固まったまま為す術もなくその場に立ち尽くしてしまった。