嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「よくあれだけ言ったな」
逆上した白鷺が投げつけたのだろう。
淡々と床に散らばったタグを拾い集めているエリカの背中に、俺は優しく声を掛けていた。
その瞬間、華奢な肩がビクッと揺れる。
「…いつから聞いてたの」
「あの女が俺と一緒のシフトに変えろって、お前に強請ってたあたり」
「ふぅん…」
何事もなかったかのように装っているけど、エリカは辛かったに違いない。
なんとも思っていない相手じゃないからこそ、あんなにきつい事を言って注意したんだろう。
…かつての俺が、エリカに対してそうだったように。
「いいよ。パンツ見えるから俺がやる」
「……!」
そう言われて顔を真っ赤にしたエリカが、短いスカートを押さえながら急に立ち上がる。
「嘘だよ」
「な…っ」
その隙に俺は冷たいフロアに手を伸ばし、さっさとタグを回収した。
「お前のことだから、あいつの条件飲んで俺のこと避けるだろうなって正直思ってた」
「…そりゃ私もそうした方が楽だなって、一瞬思ったけど…」
拾い集めたタグを俺はエリカに手渡す。
今言った言葉が、素直じゃないエリカの強がりだと俺は見抜いていた。
「思ったのかよ。…まぁそんなの、俺が許さないけどな」