嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

「よくあれだけ言ったな」

逆上した白鷺が投げつけたのだろう。

淡々と床に散らばったタグを拾い集めているエリカの背中に、俺は優しく声を掛けていた。

その瞬間、華奢な肩がビクッと揺れる。

「…いつから聞いてたの」

「あの女が俺と一緒のシフトに変えろって、お前に強請ってたあたり」

「ふぅん…」

何事もなかったかのように装っているけど、エリカは辛かったに違いない。

なんとも思っていない相手じゃないからこそ、あんなにきつい事を言って注意したんだろう。

…かつての俺が、エリカに対してそうだったように。

「いいよ。パンツ見えるから俺がやる」

「……!」

そう言われて顔を真っ赤にしたエリカが、短いスカートを押さえながら急に立ち上がる。

「嘘だよ」

「な…っ」

その隙に俺は冷たいフロアに手を伸ばし、さっさとタグを回収した。

「お前のことだから、あいつの条件飲んで俺のこと避けるだろうなって正直思ってた」

「…そりゃ私もそうした方が楽だなって、一瞬思ったけど…」

拾い集めたタグを俺はエリカに手渡す。

今言った言葉が、素直じゃないエリカの強がりだと俺は見抜いていた。

「思ったのかよ。…まぁそんなの、俺が許さないけどな」

< 146 / 259 >

この作品をシェア

pagetop