嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

なかなか視線を逸らそうとしない俺を見て、エリカが気まずそうに肩を竦める。

「なんか、誰かが怒ってあげなきゃ、ゆりちゃんはいつまでたっても成長できない気がして…。そういうところが、昔の自分と重なったの」

静かに息を吐いたエリカの表情は、どんどん暗くなっていった。

「てかさ、人を怒ることってこんなにパワー使うことなんだね。言ってる途中でしんどくなったよ。あー…知らなかった」

…馬鹿だな。エリカが自己嫌悪に陥る必要なんて、全くないのに。

「橘マネージャーが私を怒るのは、ずっとストレス解消するためだって思ってた。…でも私なんかのために、そういう嫌な役引き受けてくれてたんだね」

そう言って力なく笑ったエリカのことを、俺はまたこの手で抱きしめたい衝動に駆られてしまった。

「ったく…バーカ」

咄嗟に伸ばしてしまった手の行き場に困って、俺はエリカの頭をぽんと叩きぐしゃぐしゃに乱す。

「ぎゃーっ、ちょっとやめてっ」

頼むから。

…俺の前で、あんまり可愛いこと言わないでくれ。

このままじゃ、そのうち抑えきれなくなってしまいそうだ。

「確かにそういう目的のために叱ってきた奴もいたけど、お前に関してはそれだけじゃない」

「…どういう意味?」

< 147 / 259 >

この作品をシェア

pagetop