嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
なかなか視線を逸らそうとしない俺を見て、エリカが気まずそうに肩を竦める。
「なんか、誰かが怒ってあげなきゃ、ゆりちゃんはいつまでたっても成長できない気がして…。そういうところが、昔の自分と重なったの」
静かに息を吐いたエリカの表情は、どんどん暗くなっていった。
「てかさ、人を怒ることってこんなにパワー使うことなんだね。言ってる途中でしんどくなったよ。あー…知らなかった」
…馬鹿だな。エリカが自己嫌悪に陥る必要なんて、全くないのに。
「橘マネージャーが私を怒るのは、ずっとストレス解消するためだって思ってた。…でも私なんかのために、そういう嫌な役引き受けてくれてたんだね」
そう言って力なく笑ったエリカのことを、俺はまたこの手で抱きしめたい衝動に駆られてしまった。
「ったく…バーカ」
咄嗟に伸ばしてしまった手の行き場に困って、俺はエリカの頭をぽんと叩きぐしゃぐしゃに乱す。
「ぎゃーっ、ちょっとやめてっ」
頼むから。
…俺の前で、あんまり可愛いこと言わないでくれ。
このままじゃ、そのうち抑えきれなくなってしまいそうだ。
「確かにそういう目的のために叱ってきた奴もいたけど、お前に関してはそれだけじゃない」
「…どういう意味?」