嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
自分が勝手にやったことでしょ!と言わんばかりに、エリカは俺に非難めいた眦を向ける。
「いいから帰るぞ。お前が休日出勤してまで働く必要はない」
掴んだ腕を俺の方に近づけると、エリカの顔は誰から見てもわかるぐらいに真っ赤に染めていた。
(…本当に、こいつは。)
「帰らない。ゆりちゃんが辞めちゃったのは私のせいなんだから、私が代わりに働く!」
「いいか結城。そんなことして身体壊したら、元も子もないぞ」
諭すように言い聞かせても、エリカは聞く耳すら持とうとしない。
「…そうですよぉ」
絶妙なタイミングで聞こえてきたその声に俺は安堵し、エリカは驚いたまま固まってしまっていた。
「ゆり…ちゃん?」
「ずっと無断欠勤していて、本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げながら謝罪の言葉を口にし始めた白鷺を、エリカは信じられないものを見たような目で凝視している。
「どうか、もう一度ここで働かせてください…っ!」
困惑するエリカに今までの事情を話し、白鷺も真摯な態度で謝罪を続ける。
「…良かったな。嫌われ役になった甲斐があって」
そう言って優しくエリカの頭に手を乗せれば、俺を見上げる大きな瞳の目尻が赤く潤み始めていた。