嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「じゃあ白鷺、後のことは頼んだぞ」
「はい…っ」
「…え、ちょっと!」
エリカの指を絡ませるように繋ぎながら、俺はエリカを引き連れて事務所を出ていく。
白鷺は突然呼び出したにも関わらず、約束通りきちんと結城に謝罪してくれた。
彼女の真剣な表情を見る限り、もう心配はいらないだろう。
「…待って!ねぇ、お願いだから待ってってば!」
エリカは相変わらず顔を真っ赤にして、繋がれた手を放そうと必死で抵抗してくる。
そんな顔されたら、期待しないわけがない。
エリカも俺と同じ気持ちなんじゃないかと、都合のいいように勘ぐりたくなってしまう。
「信じられない…!ゆりちゃんの前で…。せっかく戻ってきてくれたんだから、こういうことしないでよ」
「あいつに遠慮する必要ないだろ」
「だってゆりちゃんは、橘マネージャーのことを…」
なんでエリカが、こんなに憤慨するのか理解できない。
白鷺に遠慮しての行動だったらと思うと、怒りの感情が沸々と湧いてきた。
態度で、言動で、これでもかというくらい示しているのに、エリカは俺の思いに気づくどころか他の女を宛てがおうとしてくる。
鈍感という言葉では言い表せないくらい、エリカは残酷だ。
「勘違いするな。…俺は別に年下が好きなわけじゃない。そもそも、年下と付き合ったのなんか、お前が初めてだ」