嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
ほとんど告白に近いことを言っているのに、エリカは意味がわからないと言わんばかりに惚けた顔をしている。
その顔をもう一度真っ赤に染めてやりたい。
「俺は別に、年齢で付き合う相手を判断してるわけじゃないからな」
そう付け加えれば、なんとなく言いたいことが伝わったのか、エリカの頬が少しだけ色付いていた。
「ソ、ソウデスカ…」
俯いたエリカのつむじを、俺は真上から見下ろす。
二人だけしかいない、エレベーターの密室空間。
僅かな呼吸の音すら耳に入ってくるこの場所は、今の俺にとって毒以外のなにものでもない。
手を伸ばして思い切り抱きしめたくても、それが許されない今の関係。
あれだけ大胆なことをしたあの夜の勢いは、完全に俺の中から消え去っていた。
「あれ、B1って…」
寧々を迎えに行くと思ったらしいエリカは、地下の駐車場まで連れて来られたことに疑問を抱いている。
「小さい子を連れて、人混みを連れ回す気か」
「…人混み…?」
保育園に預けたままでいいと続けた俺の言葉に、エリカは首を傾げていた。
せっかく二人で過ごせる時間が出来たんだ。
これを有効に活用しない手はない。
あらかじめ取り払っておいたジュニアシートのない助手席に、エリカを案内する。
「…それってまさか、二人で出かけるってこと?」
今更俺の目的に気づいたのか、エリカは身を固くしたままなかなか車に乗ろうとしない。
「なんでそんなに恥ずかしがってるんだ。…今更だろ」