嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「あのゴメン…私も調子乗りすぎたし、後からお金ちゃんと返すから」
他人の子供のクリスマスプレゼントの金額としては、確かに常軌を逸してる金額に思える。
だけど寧々は俺の本当の娘なのだから、別に何も問題ない。
むしろエリカに遠慮されてしまうことが、他人だと言われているみたいで悲しかった。
「こんなの…たいしたことないから。さっきも言ったように俺は自分の意志で、寧々にプレゼントを贈りたいと思ってるんだ。結城に強要されたわけじゃない」
「でも…」
「こんなのはした金だって言ってるだろ。俺は忙しくて金を使う暇もないんだから、ボランティアでもしてるつもりになればいい」
「…はした金って…!このブルジョワめ!」
「そうそう、謙虚なエリカなんて面白くもなんともない。俺はまだまだ買い足りないくらいだから、もっと好きなだけ選んでほしいくらいだ」
「言ったわね…」
余裕たっぷりの笑顔で応戦する俺に、エリカは目の奥にメラメラと闘志を燃やしている。
「ほら、生クリームついてる。…お前は子供か」
「……!」
先程からクレープを頬張っていた口元に指を伸ばし、エリカの唇の端についたクリームをそっと拭って舐めてやる。
突如、火のついたように顔を真っ赤にしたエリカは、すごい勢いで立ち上がり化粧室に向かって猛然と駆け込んでいってしまった。
(あいつといると、本当に飽きないな)
まだ時間はたっぷり残っていると思ったのに、真っ青だった空に段々茜色の雲が広がり始めている。
エリカといると、時間が経つのが恐ろしく早く感じてしまう。
…もっと一緒にいたい。
抱き合うよりもこうやって過ごす方が楽しいなんて、二年前の俺だったら考えもしなかったと思う。