嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
すぐに反応できた俺はエリカの肩に手を伸ばし、自分の胸に引き寄せるような形で抱きとめる。
「おい、大丈夫か」
「…平気平気。寝不足だとよくこうなるから」
明らかに青い顔をしているくせに、エリカは気丈に口角を持ち上げ笑顔を作っていた。
休み返上で働いていたツケが回ってきたのだろう。
それなのに今日色んなところに連れ回してしまったことを、今更ながら後悔せずにはいられなかった。
「あと…いいよ」
労わるようにその細い肩を撫でれば、エリカは戸惑いながら俺の手を押し返そうとする。
もっと頼ってほしいのに、エリカは決して俺の手を借りようとしない。
今だってまるで避けるように、俺の顔から頑なに目を逸していた。
今日一日ずっと一緒に過ごして、少しは心が近づいたと思ったのは俺だけだったのだろうか。
エリカと一緒にいるのが楽しいと感じたのは、俺だけなのか?
「結城」
「…なに?」
「俺がずっとお前と話そうと思ってたのは、この前…俺がここに泊まった夜のことだ」
その話題を持ち出せば、エリカの双眸が大きく見開かれる。
白い喉元がゆっくりと嚥下されるのを、俺はじっと動かないまま見据えていた。