嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「別に…聞かれるようなことは、何もなかったよ」
徹底的にとぼける気満載のエリカの言葉を聞いて、俺は眉間に皺を寄せる。
やはりエリカは、なかったことにするつもりだ。
…そっちがそういう態度を取るんだったら、こっちにだって考えがある。
「だってお前がいきなり不機嫌になったの、あの後からだよな。…お前なんか知ってて、俺に隠しごとしてるだろ」
「し、してないし!なんなの、急にそんなこと言い出して…」
話を変えたいのか、寧々を迎えに行こうと俺を誘うエリカの腕を引っ張って、再び俺の胸の中に引き寄せる。
「嘘つくなよ。…俺、ここでお前とめちゃくちゃエロいことする夢見たんだ」
「…は…?」
「あれってどこまで本当にやったのか、いい加減白状してくれないか?」
俺の策略にはまったエリカは、面白いくらいに目を白黒させていた。
「だって夢にしてはリアルすぎるだろ。匂いも感触も、間違いなく全部お前だった」
わからない、でチャラになんかさせない。
忘れたふりをするなら、嫌でもあの時の感覚を思い出させてやる。
エリカの背中に手を回した俺は、柔らかいその身体に、これ以上ないくらい自分の体躯を密着させていく。
「聞こうと思っても、お前徹底的に俺のこと避けてただろ。今日だって、なかなか聞くタイミングが掴めなくて。…なぁ…まさか俺たち、最後まで…」
「そんなわけないでしょ!未遂だから!」
状況が状況だけに、慌てふためいたエリカが、あっさりと口を滑らせる。
「…へぇ、じゃあやっぱり夢じゃなかったんだな」
しまったと口を押さえたエリカの顔を、俺は黒い笑みを浮かべながら見下ろしいていた。