嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
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早番での業務を終えた後、俺はバックヤードにこもり、搬入された商品をどんどんハンギングしていく。
全てはエリカにかかる負担を軽くするため。
立ちくらみを起こしたあの日から、俺は率先して裏方の作業を残って手伝うようになっていた。
「…エリカに対して過保護すぎない?橘マネージャーって」
「ほんと、毎日よくやりますよね~」
一心不乱に作業へ没頭していた俺の耳に、休憩室から聞えよがしな声が届いてくる。
この甲高い声の主は、間違いなく相沢と白鷺だ。
仲が悪かった二人も、いつの間にか徒党を組むようになったらしい。
「橘マネージャーはエリカの体調気遣って差し入れとかしてるのにさ、本人は“太らせようとしてる!嫌がらせだ”って怒ってんの。ほんとあの子ウケるよね~」
「…うわぁ。それじゃ全然報われてないんですね」
「エリカは誰かさんのせいで恋愛に対してトラウマ抱えてるからね。因果応報、自業自得ってやつよ」
相沢の言葉が、さっきから地味に胸へと刺さる。
そう。…俺はもうエリカに対して、こんな地味なことぐらいしかしてやれない。
それでも調子に乗って触れたあの日から、エリカは確実に俺のことを意識するようになった気がする。
それも警戒ではなく、かなり好意的なものを含んで。
エリカから向けられる瞳の奥には、なんとなく熱がこもっているように感じられる。
それが思い上がりではないと信じながら、俺は今日も自分に貸したノルマを淡々とこなしていった。