嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「寧々、寒くないか?」
「うん!だいじょうぶっ」
早番で残業はしたものの、エリカより早く上がった俺は寧々を保育園まで迎えに行き、あいつが仕事を終えるまでの時間を二人で過ごす。
最近益々俺に懐いてきた寧々を、俺は今まで一緒にいてやれなかった分、思いきり甘やかしてやりたい。
それに加えて、寧々のことを、何があっても守ってやりたいとも思う。
だって寧々は、エリカと俺の間に生まれた子供だから。
自分の子供が、こんなに愛おしくて尊い存在だとは思わなかった。
「ママ仕事終わったって。すぐ会えるからな」
わくわくしながら助手席に乗り込んだ寧々に、俺は隣から優しく声をかける。
もしかしたら、俺たちはこのまま本当の家族になれるかもしれない。
エリカの最近の態度を見ていると、俺はそんな淡い期待を胸に抱かずにはいられなかった。
「…寧々…?」
ふと、妙に大人しくなった寧々に目を向ければ、長いまつげを閉じている姿が目に入ってくる。
さっきまでママに会えるとはしゃいでいたのに、車が走り出してから三分と経たないうちに眠ってしまったらしい。
規則的な呼吸を続ける小さな身体に、そっとブランケットをかけてやる。
エリカとそっくりすぎる寧々の寝顔を、俺はとても穏やかな微笑みを浮かべながら見つめていた。