嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「ちょっと、ひろくんのことバカにしないでよ」
思いがけずエリカが言い返してきたことに、俺の怒りのボルテージが上昇していく。
俺のことは“橘マネージャー”なのに、あいつのことは慣れ親しんだ愛称で呼ぶ。
そんな些細なことにすら、腹が立って仕方が無かった。
「…さっきから俺をバカにしてんのか」
「ちょっと、静かにしてよ。寧々が起きるっ」
エリカはヒートアップしてきた俺を宥めるように、肩を押さえながら自分の唇の前に人差し指を立てていた。
「俺は、…一体お前の何なんだよ」
吐き出すようにそう告げながら、エリカの首に手を回しこちらに引き寄せる。
もう唇が触れてしまう一歩手前。
エリカはすんでのところで横を向き、俺のキスを拒んでいた。
「なんだよ…それ」
まさかあいつに操でも立てるつもりか?
急に会って懐かしくなり、気持ちまで復活したのか?
「この間は、受け入れたくせに…」
俺はそのまま、エリカの首筋に向け激情を押しつける。
「やっ…つけな…いで…っ」
抵抗するエリカを押さえつけながら、俺は独占の印をそこに刻んでいた。
「悔しかったら、いつまでもふらふらしてる自分を恨め」
あいつにだけは、エリカの心を渡したくない。
嫉妬に狂った俺の心は、醜い感情でいっぱいになっていた。