嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

「ふーん。……だったら別に、いいんだけど」

何か煮え切らない返事をする美月の方を気にしつつ、事務所や休憩室の戸締りを確認していく。

そもそも橘マネージャーは、会わなくたって二年間も私のことを思い続けてくれた。

……だからああ見えて、すごく一途で忍耐強い人だと思う。

こんなに電話してきたのは、ちゃんと仕事に間に合ったのか確認したかったからだろう。

まぁ全然会わなくたって余裕みたいな顔されたら、さすがに面白くはないけれど。


「美月は今日彼と会うの?お迎えくる?」

「んーん。今夜は会う予定ないよ」

「じゃあ一緒に帰ろ!久しぶりに、美月のご飯食べたい!そのまま女二人で新年会やろ!」

「……しょうがないなー」


呆れた声で返事をしているけど、美月の表情はまんざらでもなさそうな感じ。

美月には彼氏もいるし、私には翔太がいるから、こういう機会はこれからどんどん減っていってしまうだろう。

お店の目標も無事達成し、久しぶりに親友と二人で羽を伸ばせるとあって、私はものすごく浮かれていた。


「なに?橘マネージャーにメール?遠慮なく電話すればいいのに」

「……放っておいて」


美月に翔太との会話なんて聞かれたくなくて、私はいそいそとエレベーターの中で文字を打ち込んでいく。

無事に間に合ったことと、目標を達成したこと。

それらのメッセージを送信してから数秒もたたないうちに、手の中にあったスマホが勢いよく振動した。

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