嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
(……ないない。昨日東京に帰ったばかりなのに、わざわざ仙台まで戻って来るわけ……)
翔太の言葉に、期待と不安が入り交じる。
私の知っている橘翔太は、そこまで熱い男じゃない。
交通費だってバカにならないのに、わざわざ私に会いに来たりするわけ……。
「……!」
職員玄関の入口から外に出た私は、見覚えのある車にはっと息を飲んだ。
続く美月も私の様子に気づき、“あっ”と声をあげる。
夜の闇と紫煙を纏ったその姿に、道行く人たちの視線が集まっているのがよくわかる。
タバコの煙を燻らせながら私を視界に捉えた彼は、甘ったるい黄金比率の目元をゆっくりと細めていた。
そこに立っているだけで男前と認識出来る翔太を、とてもじゃないけど私は直視することなんて出来ない。
なんで仙台にいるの?
なんでわざわざそんないいスーツ着て来るの?
色んな疑問で頭がパンクしそうになった私は、翔太に近づくことも出来ずにその場で頭を抱えていた。
「ちょっと、エリカ! 顔上げなよ! 橘マネージャー、なんかめっちゃ不機嫌な顔してるよ!」
そんなこと言われても、私にはどうしようもない。
翔太の顔を見ちゃうと、嫌でも昨夜のことを思い出してしまって、身体中がカッと熱くなる。
彼の登場は本当に予想外のことで、私の心臓は壊れそうなくらい早鐘を打っていた。
「……エリカ」