嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
オープンの日に来るという約束を反古にしたエリカを、俺はひどく恨んだ。
期待させといて、ギリギリのところで突き落とされる。
もう一ヶ月近く顔を見ていなくて俺は限界に近いのに、なんであいつは平気なんだろう。
…初めからわかってた。
結局エリカにとって俺は、初恋の男の身代わりという存在でしかないんだから。
俺が店舗に立ってからの三日間、連絡すら取れないことにはさすがに憤りを覚えた。
俺とエリカの関係はこんなにも脆いものだと、改めて思い知らされる。
余計なことをなるべく考えないように、俺は仕事に打ち込んだ。
そして、ヘルプの最終日。
ようやくこの店での役目を終え、翌日から休日を挟んで通常の勤務に戻れる。
それなのに、気持ちは全く晴れなかった。
「あれ…?」
そしてこんな日に限って、車のキーが見当たらない。
「…くそっ」
軽く舌打ちしながら駐車場を探し回っていると、俺の車の近くに人の姿があることに気づいた。
遠目で見て女だとわかり、一瞬心臓が跳ねる。
(…まさか)
わずかな期待を抱きつつ、早足で近づいていく。
でもそれが長い黒髪だとわかった瞬間、俺はひどく落胆した。
「…そこで何してる」