嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
車を駐車場に停めて、逸る気持ちを押さえながら店に向かって歩き出す。
自動ドアを潜った瞬間、いち早く俺の姿に気づいたのは佐伯店長だった。
「あれ、橘マネージャーどうなさったんですか。スーツじゃなくて私服なんて珍しい。もしかして、今日はお休みですか?」
「エ…結城は」
店内を見渡しても、その姿は確認できない。
でも同じ空間にいるのかと思うと、それだけで心臓がどんどん慌ただしくなっていく。
「結城はどこに?」
「あ…今、バックヤードに…」
俺のいつもと違う様子を感じ取ったのか、佐伯店長がたじろぎながらそう答える。
その言葉を最後まで聞くことはなく、俺の足はバックヤードへ続く扉へ向かっていた。
ちょうどその時だった。
内側からドアが開いて、ダンボールを抱えたエリカが俺の前に現れる。
「…え…?」
そして俺の存在に気づいた瞬間、わかりやすいくらい表情が驚愕の色に変わった。
「……っ」
エリカは目を見開きながら顔をしかめたかと思うと、くるっと身体を反転させてまたバックヤードの中に戻っていく。
「エリカ…!」
店の中にいるにも関わらず名前で呼んでしまったのは、俺も冷静さを欠いていたからかもしれない。
エリカの背中を追いかけて、薄暗い倉庫の中へ突き進んでいく。
後ろから腕を掴んだ瞬間、エリカは持っていたダンボールを足元に落としていた。