嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

「こっちに来い」

つかつかと歩み寄った俺に腕を掴まれて、エリカの顔は一層赤みが増していく。

そのまま引きずるようにしてベッドまで誘導すると、俺はその華奢な身体をあっという間にシーツの上に組み敷いていた。

「ま…、待って」

必死に閉じようとしている足の間に身体を割り込ませて、小さな手を思いきり開かせて自分の指で絡め取る。

軽く体重をかけただけで、潰れてしまいそうなくらい頼りないその身体。

久しぶりに感じたエリカの柔らかい匂いに、めまいが起きそうな程クラクラした。

「お願い翔太。…私も、シャワー浴びたいから」

俺の胸を押し返してきた手に、本気の抵抗の力は感じられない。

怯えていたくせに虚勢を張って挑戦的な目で俺を見返してくるから、余計に加虐心が刺激された。

「…んんっ…!」

シーツに腕を縫いつけたまま、潤んだ赤い唇を強引に奪う。

どこまでも吸いつくような柔らかい感触に酔いしれながら、キスの角度を深めていく。

漏れだす吐息すら逃さないように、俺は甘いひと時を堪能していた。

うっすらと目を開ければ、苦しそうに歪んだエリカの大きな瞳が視界に入ってくる。

やがてそれが潤み始め、雫が一筋の線を描きながら絹のような肌を滑り落ちていく。

エリカが泣いている事に気がついた瞬間、俺ははっとして唇を開放した。

「エリカ…?」
 
「…ふ、…っく…」

涙で濡れていく頬を、俺はただ黙って見つめることしか出来ない。

なんでエリカが泣いているのか、全く理解できなかった。

「…私は、…翔太の…なに?」

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