嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「これにします。包んでください」
「ありがとうございます。少々お待ちくださいませ」
俺が選んだ指輪をエリカが嵌めている姿を想像するだけで、幸せな気分を味わえる。
何度も触れ合ってきた細い指。
エリカのサイズは、俺の身体がしっかりと覚えていた。
本当は名前を入れて欲しいところだが、クリスマスまでもう時間もない。
指輪をインスピレーションで決めて、すぐに店員さんに包んでもらった。
どうせ結婚指輪もこれから贈ることになるんだ。
名前はその時でいいし、デザインも二人で考えたい。
エリカにしてしまったことを、過ちになんてしたくない。
子供がいるいないに関わらず、俺はエリカと人生を歩んでいきたい。
俺はエリカじゃないと…ダメなんだ。
恋人たちで溢れかえる街を見つめながら、俺はただひとりの愛しい存在に想いを馳せる。
エリカからの連絡も、もうぱったりと途絶えてしまった。
今さら俺から連絡しても、エリカは会いに来てくれないだろう。
だったら当日でいい。
クリスマス当日に店に行けば、間違いなくエリカに会えるから。
俺はそこで必ずプロポーズしようと、今しがた買ったばかりの指輪のギフトバッグを強く握り締めていた。