少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

「…ッ!ついた…ッ!」

光が見えた瞬間焦るようにして駆けだすアルツ。

声をかける暇もなく小柄な黒い少女は光の方へ駆けて行った。

「アルツ…!待て!」

急いで後ろを追いかける。ってかアイツ足早!?

近いだろうと思っていた距離は意外にも遠く、つくころには完璧に見失ってしまった。

「アルツー?!…どこ行ったんだよ…」

家の周囲を歩きながら探してみる…と、辛うじて物置と呼べるような小屋を発見した。

中で小さくゴソ、と何かが動く音がする。

動物でもはいってんのか?と中を覗き込むと、

アルツに良く似た銀髪の少年が入っていた。

アルツを同じくサラサラした少年にしては長めの銀髪を後ろで一つに結び、白いシャツに黒いハーフパンツと黒いブーツ。違うのは髪色だけだ。

そしてあの少女と同じ紅い瞳は驚きに見開かれて俺を見つめている。

「ビックリした…!なぁなぁ、君がアリスだろ?」

勢いよく立ちあがると鉄格子で出来た子窓をガシャガシャ揺らして問いかける。

…なんか、性格もアルツと似てるようで若干違うな。

「お、おぉ。そうだぜ、俺が在須だ。…なぁ、お前がアイスか?」

「そう、そうだよ。オレがアイス。アルツの弟。」

嬉しそうに満面の笑みを湛えて頷くアイス。

アルツの表情が薄い分、アイスに行ったって感じか?

「なぁアリス。君がここにいるって事はアルツもここにいると思うんだけど…よ。」

先程の笑みとは一転、眉を寄せて困ったように微笑むアイス。

「アイツに、オレは大丈夫だから街に逃げろって伝えてくれない?」

そう言って鉄格子の窓から一歩離れた。
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