少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

「伝えてくれって言われてもよ、俺はアルツに頼まれて来ちまったからな。弟を一緒に探すって。」

「そうだとしでも、さ。アルツだけでも逃げて欲しいから。」

小さく首を横に振ると相変わらず困った笑顔でコチラを見るアイス。

「俺は大丈夫だからって、ね?簡単だろ?」

「…ダメだ。アイツめちゃめちゃお前の心配してたぞ?ごまかせるわけ「アイス!!」

突然大声が聞こえて俺もアイスも固まってしまい、首だけで後ろを振り返る。

小柄な少女は息を切らせて、目から支えきれなくなった涙をポロポロ溢しながら窓に駆け寄ってきた。

「アルツ…ッ!?お前、何できちゃったんだよ?!」

「…ふざけ、ないで。アイスだけ置いていける訳、無い。」

「…戻ってきたら、アルツも喰われるかもしれないんだよ?!」

「だって、お父さんも、お母さんも変わっちゃったから…もう、アイスしか、いないから。」

嗚咽を漏らして切れ切れに話すアルツを前にどうしたものかと困っているアイス。

やがて躊躇いがちに手を伸ばして、アルツの頭を優しく撫でた。

「…ゴメンね、オレ、アルツの気持ち考えてなかった。」

「一緒に出よう、この家から。そこに斧あるだろ?ドア壊せる?」

アイスの問いかけに涙でぐしゃぐしゃの顔を拭いつつ頷くと、

アルツは斧を手にと…れねぇわな、まず持ちあげれねぇか。

「貸せよ。俺が壊してやっから。」

アルツを下がらせて斧を手に取る。小型とは言え中々重いな…

「アイスもいいか?そこ下がってろよ…っっとぉ!」

思いっきり振りかぶってドアに叩きつける。

メリッ!と嫌な音がするが一回叩きつけたぐらいじゃ壊れない。

もう一度、もう一度…叩く内にどんどん脆くなって行く感触が手に伝わる。

結構な音なってるけど親こねぇか…?つか疲れたなオイ…。

上がる息でコレがとどめだ!と言わんばかりに叩きつける。

バキィッ…と一際乾いた音を立ててドアが崩れ落ちた。

よっしゃ…!壊れた!とガッツポーズを決める俺の横をすり抜けて、

アルツはアイスに抱きついた。

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