少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

…いやいやいや、ちょっと待て。おかしいだろ。

今にも歩こうと片足上げてる奴、はしゃいでるのかジャンプしてる奴…

何であんな完璧に動きとめられんだ?

「おや、かなり間の抜けた表情ですが大丈夫ですか?」

心配そうに顔を覗きこんでくるウサ耳。間の抜けたって何だよ。

「いや、だってお前…ハ?」

「凄いでしょう?あまりにも片割れが授業の事で不安そうでしたので少し時を止めてみました。」

ふふん、と得意げに笑うけど…ちげぇよ、俺が不安なのはそういう事じゃねぇよ。

もっと根本に色々あんだろ、と言いたい事は山ほどあるが声にはならない。

「それじゃあ、片割れの悩み事も消えたようですし行きましょうか。」

「……行くって、何処にだ……」

「何処って、アリスの元ですよ。今更何を言ってるんです。」

絞り出した一言に即答すると、ウサ耳は何やら厳つい鍵を取りだした。

「…なぁ、分かるとは思うんだけどソコ体育館の倉庫だぜ?んな所からどうやって…」

「鍵穴があるならば十分ですよ。今から繋ぎます。」

事もなげに答えると鍵をカチリ、と鍵穴に指して回す。

いつもは建て付けの悪いはずのドアがスッと開いた。

その先は黒。黒と言うよりも漆黒。こんな所に行けってか?冗談じゃねぇ。

「さて、それでは…案内役の私のお仕事はこれまでです。それでは片割れ、行ってらっしゃい。」

「っや、待てっ…っだあああああぁぁあぁ!」

振りむいて止めようとするとドンッと胸を押されてバランスを崩し、そのまま漆黒へと落ちていく。

体を包み込む浮遊感。頭上のドアから差し込む光だけが漆黒の中で眩い。

暫くウサ耳は俺に向かって手を振っていた。

やがてひらり、と俺とは全く違った優雅さで漆黒の中へ降り立つと宙に浮く。

…アイツマジで何者だ、浮くわ時間止めるわ…ってか浮けんなら俺も浮かぶようにしろよ。

そうこう考えてる内にドアはウサ耳の手によって閉められた。

光もなにもない漆黒が包み込む。

恐怖の中、なんでこんな時に…と思うのだが眠気が襲ってきて俺の意識は闇に沈んだ。
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