少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

聞いた俺がバカだったか。全っ然分かんねぇ。

猫耳部分に謎の安全ピンを付けたパーカーに身を包んだ奴は相変わらずニヤニヤ笑いながら

「まぁ、追々分かるよそんな事は。今はどうでもいいだろ?」

と言って、クルリと背を向けた。

俺にしたらどうでもよくねぇんだよ畜生。

「ところで片割れクン、お前実は今迷子だろ?何なら僕が連れてってやっても良いぜ。」

唐突に言うとチラ、と猫のような目でコチラを見てくる。

「連れてく…って、何処にだよ?」

「何処って言うのはまた変な質問だねぇ。ハジマリの箱庭に決まってるだろ?」

そんな事も忘れちゃったのかい、と心底呆れた風に肩をすくめる猫目。

「忘れたも何も身に覚えがねぇんだよ。箱庭より学校に帰してくれ。」

「それを世間一般では忘れたって言うんだよ片割れ?帰してやってもいいけど、アリスに会ってからだよ。」

「うるっせぇわ!…んで、そのもう一人のアリスって何者?」

「アリスはとってもとぉーっても君に会いたがってるんだ。ホラ、だから急ぐよ?」

スルーかよ。んで帰りたいって俺の意見は結局却下されんのかよ。

スタスタ図書館の中を突っ切っていく猫目の後をげんなりしながら追いかける。

本と棚の山をかき分けながら進むと埋もれていた古びた扉の前で猫目はピタリと立ち止まった。

「さぁて、ココが僕の案内できる終着点だよ。」

ギィと音を立てて扉を開けると猫目は笑う。

「ここから先は一人で行くんだぜ?大丈夫、すぐに箱庭につくさ。」

芝居がかった仕草で扉を指し示すとこれまた芝居がかった仕草で、

「行ってらっしゃい、我らが片割れ。無事に彼の人と会えますよう…」

恭しく一礼すると手で進めと指し示す。

この扉の先に進むのは仕方なくだ、好奇心なんかじゃねぇぞ。

そう自分に言い聞かせながら一歩扉の外へ踏み出す。

ギィと開いた時と同じ音を立ててドアが閉まった。

振りかえるとドアから漏れる光は見えず、まるで最初から何も無かったかのようだ。

前方に見えるわずかな光を頼りに、歩き始めた。
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