少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

…何だよコレ…取れねぇし…

呆然としている顔になっていたのか少女がテクテクとコチラに歩み寄ってきて、

「どうしたの、アリス。凄く変な顔になってる。」

心配そうにのぞきこんできた。変な顔って何だよ。ほっとけよ。

「…いや、何でもねぇ。ところで君は何でこんなとこにいんの?」

怖がらせないように優しく言うよう心掛けて話題を変える。

相変わらず少女は無表情のまま声だけむっとさせて

「私の名前は君じゃない。アルツって言うの。」

と言って来た。

「…そっか、じゃあアルツ。どうしてこんなとこに?」

「弟を、探してるの。…悪い魔女に捕まっちゃったんだわ。」

前半はハッキリと、後半は呟くように言った。そのまま俯いてしまう。

小さい肩が震えている。…俺泣かせた?泣かせた感じか?

声をかけるべきかオロオロ迷っていると少女…アルツはぱっと顔を上げて

「アリス、御願い。弟を一緒に探して。」

と頼んできた。

「探すもなにも…弟君が囚われてる魔女の家は?分かってんのか?」

「分かってる。きっとあそこ。…魔女の家は、私達の家。」

「魔女はお母さんに化けているの。お母さんが魔女なの。」

「…だから、私だけ森に捨てたんだわ。」

話してる内にアルツの紅い目にどんどん涙が溜まって行く。

アルツには悪いが話が見えてこない。つまりどういう事だよ?

「……お母さんは、きっと、アイスを食べるつもり。」

「私がこの森につれてこられた時、お家にはもう食べ物が無かった。」

「…だから、家で留守番してたアイスを食べるつもり。」

一言一言区切るようにアルツは言う。

アイスって言うのがおそらく弟の名前なのだろう。

アルツは涙をいっぱいに溜めて、それでも強いまっすぐな瞳で俺を見据えて

「アリス、御願い。私と一緒に魔女のお家まで行って。」

ともう一度俺に頼み込んだ。
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