少年アリスと箱庭遊戯
・・・在須side・・・

横に座ってはいるものの特に話す事もなく、気まずい空気が流れる。

…コレ、何か話した方がいいのか?いいよな…どうするか…。

一人で話題をあーでもないこーでもないと考えているとアルツがふいに、

「ねぇ、アリス。アリスには姉弟っているのかな?」

と聞いてきた。

「俺か?いや、いねぇけど。」

「そう。私にも姉弟って呼べる関係なのは一人だけ。アイスだけ。」

「…お父さんは、前のお母さんが死んでから変わっちゃった。魔女の言いなりなの。」

「今のお母さんは、怖い。とっても怖い…。前のお母さんが良かったな。」

ポツポツと独り言のように呟くアルツ。

…そっか、この子…お母さんが。

どう声をかけるべきかまた悩む。悩んでいると…手が勝手に動いた。

ぽんぽんっと軽く頭を撫でるとアルツがきょとんとした顔でコチラを見てくる。

「…アリス、どうしちゃったの?」

「え!?あー…コレはな、あのー…うん。気にすんな!」

コレはコレで気まずくってわしゃわしゃと綺麗な金髪を撫でまわす。

アルツは少しむっとしたような、それでも本気で嫌がってはなさそうな顔で

「…止めて。髪乱れちゃう。」

と短く言うと俺の手を乱暴に払った。

「あ、悪い…嫌だったか。乱れちゃったな。」

我ながらシュン…と聞こえてきそうな声で謝ると困ったのか、

「…別に、嫌じゃなかったけど。それより行こ。もうすぐそこだから。」

フイッと顔逸らしたまま立ちあがり、歩きはじめる。

「って…!ちょ、オイ。先行くなよな!」

急いで追いかけて横に並ぶ。

右を見ようが、左を見ようが、前を見ようが、後ろを見ようが…

樹だけだった森の中に、ホントに小さな光を見つけたのはこのすぐ後だった。
< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop