悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~
「私の両親のお墓には毎日行くことが出来ないので、こうやってチヅル様のお墓の前に立っては、両親のことを思い出しているのです」
この子は、どれだけ辛いことを乗り越えてきたんだろう。
小さな頃から苦労して、そして今も人に仕える仕事に就いた。
もう少し楽な仕事だってあったかもしれないのに、わざわざ大変な執事を選ぶなんて……。
「あ、そうだ!サラ様。今度日食があるのご存じですか?」
「日食?」
「ええ。約2カ月後の9月10日。午後13時頃、金塊日食が起こるんですよ」
そう言って、ヘンリーは夏空でカンカンに照りつける太陽を指差した。
ヘンリーの指を追って空を見上げると、あまりの眩しさに目眩がする。
「魔界では日が昇らないので、日食をみることはできません。だから余計楽しみなんです」