悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~


「僕がここに来たのは、これの為ですよ」


そう言って、庵可くんはグっとあたしに近づき今にも唇が触れそうになった。


あたしは咄嗟に固く目を瞑り、顎をひく。


「ほら、これ」


何事も起こらず、庵可くんに声を掛けられて何度も瞬きをしながら目を開けると、庵可くんの手には天体の分厚い本が握られていた。


あたしの後ろの棚を振り返ると、そういった本がたくさん並んでいる。


「今度金塊日食があるの知ってます?」


また日食の話し。


みんなそんなに日食に興味があるの?


まぁあたしも、シキに結界が緩んだ原因が日食のせいかもしれないって聞いて、少しは興味を持ったけれど。


庵可くんの興味と、あたしの興味は少し違う。


「僕、日食を見るのは初めてなので、ちょっと気になって」


そう言って、庵可くんは重そうな表紙を開いた。


一気に銀河の世界が広がる。


「日食って、太陽と月が重なるでしょ?だからその時、世界各地でキセキが起こるらしいですよ」


「キセキ?」


あたしは首を傾げて庵可くんに聞く。




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