悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~
その時……。
「……サラ様」
梅雨の湿気を含んだ風に乗って微かに聞こえた気がして、執事を見つめた。
……サラ様。
なに……?
今あの人、あたしを呼んだの?
……気のせいだよね。
しかも、”サラ様“とか。
そんな呼ばれ方、生まれて一度もされたことがないし……。
黒羽くんと執事がどんな会話をしているかは、ガヤガヤと集まった生徒達の声で何も聞こえない。
執事は黒羽くんを車に乗せドアを閉めると、今にも泣きそうな表情で、ジッとあたしを見てきた。
確かに、あたしを見ている。
しばらく目が合い、そして、彼は深くお辞儀をし、ササッと運転席にまわり車を発進させた。
いつまでこの変なざわつきが続くんだろう。
いつになったら、”知ってる知ってる“と頷く自分がいなくなるんだろう。
あたし、何かの病気だったりして……。
病院に行って診てもらうべき?