悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~
「何も聞こえないぞ?」
……え?
聞こえない……?
“サラ……助けて“
まただ……。
梓の、声……?
「梓だ!」
あたしが声を出すと、階段にあたしの声がこだました。
「梓の声がする!あたしに助けを求めてる‼」
あたしは足元に気をつけながら階段を足早に下りた。
「サラ‼」
後ろから、ルカ達が慌ててついてくる。
どうして気が付かなかったんだろう。
この前も、確かに声が聞こえたのに。
あの時ははっきり聞き取れなくて、すっかりこの声のことを忘れていた。
梓は、ずっとここにいたんだ。
「梓‼」
牢屋の前で、あたしは梓の名前を大声で呼んだ。
だけど、あたしの声が響くだけで、梓からの返事はない。
フランさんが魔力をつかって、灯りをつけてくれる。
この前のように、残虐な跡がはっきり見える。
牢屋の中をひとつひとつ覗いていったけど、どこにも梓はいない。