悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~
「てか、どうしてここだけ雨が降ってないのかな。まぁ、少し濡れる程度だったからよかったけどさぁ」
梓はここだけ晴天の空を不思議そうに見上げ、何度も何度も体を回転させて広い洋風の庭を見まわしていた。
まだ尻もちをついたままのあたしは、瞬きも出来ずだんだん目に涙が溜まってきた。
サラサラと吹く風が、あたしの横で優雅に揺れるバラの香りを散らす。
そして同時に、庵可くんの甘い香水の匂いも、屋敷の方まで運んで行った。
すると、屋敷からバァン!とドアの開く大きな音がして、梓と庵可くんが驚いて振り返る。
こちらに向かって走って来たのは……。
「え!? ルカ様!?」
梓が、ハッと息を吸って口元を両手で押さえる。
ここでのルカは、梓たちが見ているルカではない。
制服から、悪魔の王族の服に着替えているんだ。
袖口の少しデザインの変わった質の良いツヤのある白いシャツに、第2ボタンまであけた胸元からシルバーのチェーンに翼のチャームがついたネックレスが見えている。