悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~


「てか、どうしてここだけ雨が降ってないのかな。まぁ、少し濡れる程度だったからよかったけどさぁ」


梓はここだけ晴天の空を不思議そうに見上げ、何度も何度も体を回転させて広い洋風の庭を見まわしていた。


まだ尻もちをついたままのあたしは、瞬きも出来ずだんだん目に涙が溜まってきた。


サラサラと吹く風が、あたしの横で優雅に揺れるバラの香りを散らす。


そして同時に、庵可くんの甘い香水の匂いも、屋敷の方まで運んで行った。


すると、屋敷からバァン!とドアの開く大きな音がして、梓と庵可くんが驚いて振り返る。


こちらに向かって走って来たのは……。


「え!? ルカ様!?」


梓が、ハッと息を吸って口元を両手で押さえる。


ここでのルカは、梓たちが見ているルカではない。


制服から、悪魔の王族の服に着替えているんだ。


袖口の少しデザインの変わった質の良いツヤのある白いシャツに、第2ボタンまであけた胸元からシルバーのチェーンに翼のチャームがついたネックレスが見えている。




< 86 / 296 >

この作品をシェア

pagetop