悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~
梓は、隣の庵可くんを見て、ふたりで頷いてから署名と拇印を押していた。
「ありがとうございます。それでは、今日は私がご自宅までお送りいたします」
「あ!待って下さい。その前に僕、ちょっとトイレに……」
庵可くんは、少し恥ずかしそうに手をあげ、肩をすくめた。
「結構ですよ。それでは私がご案内を」
「あ!いえ!!ご案内は私が!!」
今まで静かに壁側に立っていたひとりの執事が、勢いよく声を出した。
「ご案内くらい、私にさせてください」
そう言って、シキに頭を下げている。
「じゃあ、ヘンリー、庵可さんを案内してさしあげて」
シキが指示を出すと、その執事は「こちらです」と応接間のドアを開けた。
ふたりが出ていく後ろ姿を見ながら、シキに聞く。
「あの執事、新しく入ったとか?今まで見たことないような気がするんだけど」
「ああ、ヘンリーのことですね?彼は最近、魔界から紹介を受けて新しく採用した執事ですよ。まだ執事養成学校を卒業して間もないのでまだまだ不慣れでご迷惑をおかけすると思いますが」