ドーナツが好きってだけだけど(仮)

水筒に残ったお茶を飲みながら公園を眺める。

整備の行き届いた小奇麗な公園内には、
ブランコで遊んでいる子どもが数人しかい
ない。


大人が居ると気張ってしまうが、子どもだ
けなら気楽なもんだ。

智香はすっかりリラックスして、
ベンチの背もたれにグタッと寄りかかった。


そしてレモンドーナツをつかんで真ん中に
空いた穴を見つめると、何気なしに…




スポッ………と指にはめた。




幼い頃はよく、こうやって弟と一緒に指に
はめて遊んだものだ。

いろんな指に何個もはめては弟と見せ合っ
て笑っていた。


そのたび、食べ物で遊ぶなと親に怒られた
けど、楽しかった記憶がある。


ふふっ

その時のことを思い出すと笑みがこぼれる。

小さな頃は何事も恐れず、今よりもっと自
然に好き放題やっていたなと思う。


レモンドーナツをはめた左手の人差し指に
加え、中指、薬指と順にドーナツをはめて
いく。


そして右手にも、崩れないよう慎重に二つ
のドーナツをさした。


普段なら絶対にこんなことやらない。
でも子どもしかいない公園で私は気が大き
くなって調子に乗った。

< 25 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop