ドーナツが好きってだけだけど(仮)
水筒に残ったお茶を飲みながら公園を眺める。
整備の行き届いた小奇麗な公園内には、
ブランコで遊んでいる子どもが数人しかい
ない。
大人が居ると気張ってしまうが、子どもだ
けなら気楽なもんだ。
智香はすっかりリラックスして、
ベンチの背もたれにグタッと寄りかかった。
そしてレモンドーナツをつかんで真ん中に
空いた穴を見つめると、何気なしに…
スポッ………と指にはめた。
幼い頃はよく、こうやって弟と一緒に指に
はめて遊んだものだ。
いろんな指に何個もはめては弟と見せ合っ
て笑っていた。
そのたび、食べ物で遊ぶなと親に怒られた
けど、楽しかった記憶がある。
ふふっ
その時のことを思い出すと笑みがこぼれる。
小さな頃は何事も恐れず、今よりもっと自
然に好き放題やっていたなと思う。
レモンドーナツをはめた左手の人差し指に
加え、中指、薬指と順にドーナツをはめて
いく。
そして右手にも、崩れないよう慎重に二つ
のドーナツをさした。
普段なら絶対にこんなことやらない。
でも子どもしかいない公園で私は気が大き
くなって調子に乗った。