ドーナツが好きってだけだけど(仮)
校舎内に入ると登校してきた生徒で賑わ
っていた。
その人波に混ざりながら階段を上り着い
た4階の一番端が私のクラスだ。
「あっ、智香だー。テスト返しやだねぇ」
「おはよう、智香ちゃん!」
「おー、中沢おはよ。今日のテスト返し
俺終わったわー」
4階に着くと教室に入る前から自分の
クラス男子や女子、他のクラスの人から
もたくさん声を掛けられる。
今日はテスト返しなので皆点数が気にな
って落ち着かないようだ。
そんなみんなの声に私はいつもの笑顔で
爽やかに返した。
「おはよっ。今日テスト返しだねー。
でも早めに学校終わるから頑張ろ」
そう私がにこやかに笑いかければ、皆も
そうだねーっと少し安心したように笑顔
になる。
私はこうやっていつだって皆が求める返
事を返すのだ。
高校に入学してからどんな人にも差別す
ることなく、常に笑顔で人と接してきた。
人からの頼み事は嫌な顔一つせずに引受
け、
悩み事を聞いたり恋愛相談にも快く応じ
ながら、時には揉め事の仲裁などもこな
してきた。
その努力が報われて
二年生になった現在では、学年一優しく
て美人なみんなの憧れの女子という地位
を手に入れることに成功したのだ。
でもそんな皆の憧れの女の子を演じるの
は簡単じゃない。
常に皆の理想の女の子としてどうふるま
うべきかを考え、
時には本心とは間逆の返事をし、
自分の中の最高の笑顔出せるように自宅
では顔面体操をしたり、美容の為に運動
をし食事にも気をつけスキンケアも怠ら
ない。
そんなことを毎日するのは正直面倒だ…
でもそれを続けている理由はただ一つ