ドーナツが好きってだけだけど(仮)
ガラガラッ
教室に入るとまたたくさんの人と挨拶を
交わす。
入口から順番に、
メガネをかけた大人しい男子の集団や、
運動部系の騒がしい人達、派手めな女子
にまで一通り挨拶を終えると、
窓際の一番後ろの席に座っている友人の
所へ向かった。
「おはよう奈々ちゃん!その髪留め可愛
いねー」
「あっ、智ちゃん!ありがとー。前言っ
てたあの店で買ったんだ」
「そうなんだー。あの店良いのたくさん
あって迷っちゃうよね」
そう言えば友人の上野奈々は嬉しそうに
前髪にとめた髪留めを指さした。
だが、そんな風に褒めながらも私が
これっぽちも似合うなんて思っていない
ことに、友人や他のクラスメイトは絶対
気付かないだろう。
表面上は誰よりも皆に優しく、決して
差別をしない私だけど、
本性は見るもの全てに優劣をつけてい
るような人間だ。
冴えない外見の人、自分より頭が悪い
人を見下し、口では優しい言葉を掛け
ていても心の中で悪態をついている事
がしょっちゅう。
皆が思うクリーンなイメージからは
程遠く、私はやさぐれた思考を持って
いる。
今日も奈々ちゃんの新しい髪留めを見
ながら、
前のシンプルな方が断然いいのに…
なんてひそかに思い、奈々ちゃんとの
会話に相槌を打っていた。