溶ける温度 - Rebirth -

そりゃあ一か月ほど前まで結婚をどうしようかと悩み相談をしていた私の口から、別れたという話を聞けば誰だって内容が気になるだろう。当たり前に。

私は先月美弥に話した満さんとの最後のやりとりを思い出す。
『別れた原因は聞くのが怖くて逃げたので知りません』なんて、あまりにもかっこ悪すぎて真さんに伝えたくない。
だけどこの期に及んでだんまりなんて到底できそうな雰囲気じゃなくて、少し間をおいてから口を開いた。


「別れようって電話越しで言われて。理由は聞いてません」

「なんで。聞くだろ普通」

「……別れたいなんて、冗談でいう人じゃないから。理由を聞いてもやり直したりはできないと思った」


声色に悲壮感が漂ってしまったのか、真さんは動かしていた指を止めたので、更なる静寂に包まれる。

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