溶ける温度 - Rebirth -

ふと付き合っていた頃の私たちを思い出す。

満さんはデートの際決まって『どこでもいいよ』という私に困った顔をして。
『明季はもっとわがままを言ってもいいのに』って、ことあるごとに私に伝えていたっけ。

意見を言わない私ではなく、意見を言えない私に気付いていてくれたということなのだろうか。

自分にずっと自信がなくてそのことを引け目に思っていた私は、満さんに合わせることが一番で、幸せで、正しいことだと思い込んでいた。

彼は私がいつも自分ではい誰かを“軸”にしてしまうことを憂いていたんだ。
そしてそれが自分と居ることで更に変わることができないことに気付いていたんだ。

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