溶ける温度 - Rebirth -

そうか。だからあの人は、“続けるか別れるか”という選択を、私にくれたのか。


「…真さん、私、あの人のこと勘違いしてたのかも」

「……おう」


私との身分の差を否定される言葉を聞くことが怖くて、別れの理由も聞かずに逃げたくせに。
私はたぶん、心のどこかで『プロポーズしてきたくせに別れを言うなんてひどい』という思いが、少なからずあった。

しかし、実際は。

彼が付き合っていた当時から職業も学歴も生活スタイルも気にしたことなんてなかったし。
むしろ、私が自分から彼を愛していると言わないことや、何か決めるときにいつも遠慮してしまうことに、困ったようなやるせないような表情を見せていた。

思い起こせば、『言い訳を聞いてくれないのか』と最後の最後にも満さんは私に選択肢を与えようとしていた。
それが彼の最大限の優しさだったのだろう。

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