溶ける温度 - Rebirth -

「わっ、真さんごめんなさい。そろそろ家帰る」

「あ?ああ、時間は気にすんな。俺から聞き出した話だし。まあ、目も覚めちまってるしコンビニで珈琲でも買って帰るよ」


真さんは次の日も朝から仕込みで大変だろうというのに、全く気にしていない様子で、むしろ私が吹っ切れた様子でいることを穏やかに見つめている。
私は真さんにいつも泣き言を聞いてもらって、助けてもらっている気がする。昔から変わらず頼りにしっぱなしだ。

ふと、ここで名案が浮かび、気付けば口にしていた。


「…うちでお茶飲んでいく?散らかってるけど、よければ」


実に家は目の前だし、話に付きあわせてしまった挙句何のお礼もなく帰すのは気が引けた。
それにコンビニで珈琲を買う予定なら、わざわざお金を出さずとも、この間奮発して購入した開けずじまいのブラジル産珈琲が自宅でお蔵入りしているのである。

< 124 / 162 >

この作品をシェア

pagetop