溶ける温度 - Rebirth -

*


そのまま私もマスターにタクシーを呼んでもらって帰ることもできたけれど、どうしても一人になりたくなくてそのままお店に残った。

美弥もいなくなってしまったので、なんとなくカウンターに席を変えてマスターに強めのお酒を注文する。


「おいおい、今度は明季がつぶれるとかやめろよ?」

「ジントニック一杯でつぶれるほど弱くないわよ」

「嘘言ってんじゃねーよ。お前美弥ちゃん来る前にギムレットも飲んでるだろ」

「そうだっけ?」

「俺が作ってんだ、ばれるにきまってんだろーが」


あきれた顔を隠さずマスターは私にマティーニと水を同時に置いた。
しれっと私が好むお酒を出してくれるマスターは、なんだかんだ優しい。

< 13 / 162 >

この作品をシェア

pagetop