溶ける温度 - Rebirth -
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そのまま私もマスターにタクシーを呼んでもらって帰ることもできたけれど、どうしても一人になりたくなくてそのままお店に残った。
美弥もいなくなってしまったので、なんとなくカウンターに席を変えてマスターに強めのお酒を注文する。
「おいおい、今度は明季がつぶれるとかやめろよ?」
「ジントニック一杯でつぶれるほど弱くないわよ」
「嘘言ってんじゃねーよ。お前美弥ちゃん来る前にギムレットも飲んでるだろ」
「そうだっけ?」
「俺が作ってんだ、ばれるにきまってんだろーが」
あきれた顔を隠さずマスターは私にマティーニと水を同時に置いた。
しれっと私が好むお酒を出してくれるマスターは、なんだかんだ優しい。