溶ける温度 - Rebirth -
真さんに目を向ける形で、壁に掛けられている黒板に向かい、書いてあった従来のメニューの文字を綺麗にしていく。
白いチョークを右手に持ち書きだそうとしたそのときだった。
「逃げなかったな」
私の背中の奥にいる、真さんの声にぎくりとした。
相変わらずトントントンと何かを切る音は絶えず続いているけれど、そのリズミカルな音が逆に私の返事を急かしているように感じた。
「…悪かったよ。送りオオカミみたいな真似して」
「……オオカミの自覚はあったのね」
「明季がなんの気なしに男を部屋に誘うからついいじめたくなって」