溶ける温度 - Rebirth -

「いらっしゃいま…」

「こんばんは」


玄関口へ足を進め、予約のお客様か確認しようとしたら。
あの穏やかな笑顔と、久しぶりに香るマリンの香りが鼻についた。

てっきり2次会会場と思い込んでいた私は、予想外すぎて息を止めてしまったように思う。
___大志さんだ。


「今週は出勤だったんだね。ラッキーだな」

「…はい。この間、金曜日にいらしたとマスターからお聞きしました」

「うん。明季ちゃんに会えるかと思ってね」


健気に通うことにしたんだ。そう言ってカウンターではなく少し奥のテーブル席に荷物を降ろし。
椅子に立て掛けられた上質な黒いアタッシュケースがコトンと音を立てた。

こうして会うのは、彼がハンター化したあの食事振りで。幾ばくか緊張する。

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