溶ける温度 - Rebirth -

真さんはいわゆる、仕事のできる男だった。

社員でも契約社員でもアルバイトでも。誰に対しても平等な態度。仕事の指示は的確。ミスも少ない。
難しい取引先の営業マンとも仲良くなって、編集部にいながら社内外どこでも顔の広い存在だった。
おまけに精悍な顔立ちとすらっとした体系を持ち合わせていたので、お局さんたちは編集部の王子って呼んでいたっけ。


「おい、手がとまってるぞ。さっさと店じまいするから飲んじまえ」

「…はいはいわかりました、編集部のオウジサマ」

「てめぇ…支払い倍にするからな」


ふふっと笑って真さんを見上げると、予想外に困った瞳と目線が絡まった。

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