溶ける温度 - Rebirth -
*
「ごちそうさま。真さん、そろそろ帰るね」
「おー。ちょっと待ってな」
真さんは奥で新しいレシピの考案をしていたのか、メモ帳に材料や手順を書きこんでいる最中だった。
少し興味がわいたので、その手の中を覗きこんでみる。あの出版社にいたころと変わりない、少し癖のある流れるような字が刻まれていた。
「へぇ春キャベツ!私大好きだなあ」
「ん。そろそろ春野菜で新作だす頃合いだと思ってな」
「いいね。新作できたら一番に食べにくるよ、いい?」
真さんは手を止めて私をまっすぐ見つめた。
相当楽しみな色が声に乗っていたのだろうか、子供っぽさが出てしまったようだ。少し恥ずかしくなって私はあわてて若干体を引いた。