溶ける温度 - Rebirth -

美弥と話しているここは、もちろんアヴァンシィではない。
アヴァンシィよりもだいぶ大衆向けの、立ち飲み居酒屋だ。ここは店主がこだわりを持っているドイツ産の地ビールが死ぬほどおいしい。

今日は前回別れ際に約束した、明るい話題で楽しくという女子会を果たすためのもの。なので、暗い話は厳禁である。
つまみに頼んだ豆腐とナムルを割り箸でつつきながら、アヴァンシィでの採用話をしたところ、思った以上に美弥に食いつかれたというわけだ。


「マスターに拾ってもらって助かった。明日店内掃除からスタートだけど、頑張るよ」

「そーね。こんなおいしい話、ないんだから!もっとマスターに気に入られるようにちゃんと仕事しなよー?」

「ありがとう。そうする」

「しっかし。あのエセ紳士なマスターのところかあ。顔と接客態度だけは満点あげてもいいレベルの男よね。優しすぎるけど」

「ふふ。明日伝えておくわ」



ケタケタと笑いながら、美弥は追加のビールを頼んだ。私も同じものを頼んでもらいペースを上げる。

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