隣の悪魔はご機嫌ナナメ
「あおちゃん」
小さい頃、あたしは青久のことを「あおちゃん」と呼んで、後ろをついて歩くような女の子だった。
「はる、気をつけろよ」
そんなあたしを青久は注意しながら、優しく微笑んでくれる。そんな男の子だった。
「なんだよ、ほしいのか?」
まだまだ暑い夜、浴衣を着たあたしは、りんご飴の屋台の前で足を止めた。
「……うん」
キラキラ輝くりんご飴が、なんだか宝物のように見えて。あたしはその場を離れられなかった。
「買ってあげるよ」
「え?」
この日から、あたしにとって夏は
特別なものになったんだ。