明日の君は笑う
人にそんな事を言われたのは初めてだったし,ましてや「おいしい」と言われたから,めっちゃ嬉しかった。
その日から俺は何度も何度も練習し,他のパンも作れるようになった。
しかし。
「…店長…」
店長が交通事故で亡くなった。
店はその日のうちにたたまれ,奈々穂のことを見ることはなかった。
でも,しばらくして。
入学式の時に俺の目の前を通った女を見て,俺は唖然とした。
「…あの時の子だ」
見た目,雰囲気があの時のまま。
すこし子供っぽさが消えたか?
そして,噂で知った,その子の名前。
『加賀 奈々穂』
会った時には俺はもう『奈々穂』と呼んでいた。