放課後~君とどこへ行こう~(短編集)
2、超絶空論
『超絶空論』

「あのさぁ、笹山はもし明日で地球が爆発するとしたら何をする?」
 そう聞かれて真保は内心頭を抱えた。
 ……あぁ、また何かワケ分からんことを言い出したぞ。
 横山はときどき、それも唐突に難しい話を始める。あるときは数学的だったりあるときは宇宙的だったり。
 とにかく理解できない、そして途方もない話ばかりだった。
「何をするって……そりゃ美味しいもの食べたり友達と思いっきり遊んだりするんじゃない?」
 考え考え答えると横山は「そう」、とだけ言ってそれきり黙ってしまった。
 おかしい。いつもの横山なら「ふーん、つまんない答えだね」くらい言いそうなのに。
 そう思いつつも沈黙が重くてこちらもつい黙ってしまう。
 放課後の教室に差し込む日が刻一刻と角度を変えていくのがわかる。校庭から聞こえてくる運動部の声が段々フェードアウトしていって、ついに何も聞こえなくなった頃、横山がようやく口を開いた。
「もし明日で地球が爆発するとしたら……俺はね、笹山に"好きです"って言うと思うよ」
 ようやく喋ってくれたことにほっとしたこともあり、思わずそっかぁと頷きそうになって――ものすごい勢いで横山を見返した。
「……え!? 何それどういうこと!?」
 そう叫ぶと、横山は信じられないというように目を剥いて、
「どういうことって……お前ちゃんと話聞い てたか……!? 好きだっつってんだよ!」
「え? いつから!? いつから好きになったの!? あんた全然そんな態度見せなかったじゃん!」
「そんなんいつだっていいだろ! せっかく告白してんだからちょっとは真面目に聞いたらどうだよ!」
 珍しくふてている横山に真保は抑える間もなく吹き出した。
 ヤバい、おかしい。いや、おかしいとか 言ったら失礼かもしれないけどやっぱおかしい。
 「何だよ」と言うようにじろりと睨まれたが真保にはちっとも怖くなかった。「何でもない」と笑ってごまかす。
 超絶空論を持ち出さないと告白に踏み切れない横山を不覚にも可愛いと思ってしまっただなんてことは、例え聞かれたとしても絶対に言えない。
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