黄昏時に恋をして
大晦日になり、戸田さんの愛車で熊谷夫婦の家を訪ねた。さすがはダービージョッキーだけあり、車が三台ほど停められる、広い庭のある豪邸だった。
「こんにちは、おじゃまします」
お土産のケーキを渡すと、広い家に案内された。
「ヒロ、約束通り上尾さんを誘ってきたんだな。やるじゃねぇか!」
熊谷さんのひと言に、ふたりは顔を見合わせた。熊谷夫婦に肝心なことを伝えていなかった。
「いや、あの……。実は、上尾さんとお付き合いしているんです」
「えっ! ちょっと、おたかさん! 聞いていないよ?」
コーヒーを煎れながら、真奈美さんの声が大きくなった。
「特に聞かれなかったので、言っていなかっただけで……」
「いつから?」
「おふたりの結婚式の日から」
「なんだ、ヒロ! もうやることやってんだな」
熊谷さんがコーヒーをブラックのまま、豪快に飲みながら言った。
「いや、何も」
「もったいぶっていないで、話せよ」
本当に、何も話すようなことはしていない。ふたりで顔を見合わせた。
「まだ敬語で。名前も呼んだことがありません」
「同じ年だろ? 多香子って呼びゃあいいんだよ」
「いや、そんな」
戸田さんに呼ばれる前に、熊谷さんに呼び捨てにされて、笑える。戸田さんは、ただただ頬を赤くするばかり。なんてピュアな人なんだろうか。
「戸田さんのペースに合わせますよ」
「あ、ありがとう」
「ヒロは、馬から降りるとアレだな」
ケーキは、苺から豪快に食らう熊谷さんと、苺をそっとよけて最後に食べる戸田さん。昔は、熊谷さんみたいな人がタイプだったけれど、今は断然、戸田さんみたいな人がいい。
「こんにちは、おじゃまします」
お土産のケーキを渡すと、広い家に案内された。
「ヒロ、約束通り上尾さんを誘ってきたんだな。やるじゃねぇか!」
熊谷さんのひと言に、ふたりは顔を見合わせた。熊谷夫婦に肝心なことを伝えていなかった。
「いや、あの……。実は、上尾さんとお付き合いしているんです」
「えっ! ちょっと、おたかさん! 聞いていないよ?」
コーヒーを煎れながら、真奈美さんの声が大きくなった。
「特に聞かれなかったので、言っていなかっただけで……」
「いつから?」
「おふたりの結婚式の日から」
「なんだ、ヒロ! もうやることやってんだな」
熊谷さんがコーヒーをブラックのまま、豪快に飲みながら言った。
「いや、何も」
「もったいぶっていないで、話せよ」
本当に、何も話すようなことはしていない。ふたりで顔を見合わせた。
「まだ敬語で。名前も呼んだことがありません」
「同じ年だろ? 多香子って呼びゃあいいんだよ」
「いや、そんな」
戸田さんに呼ばれる前に、熊谷さんに呼び捨てにされて、笑える。戸田さんは、ただただ頬を赤くするばかり。なんてピュアな人なんだろうか。
「戸田さんのペースに合わせますよ」
「あ、ありがとう」
「ヒロは、馬から降りるとアレだな」
ケーキは、苺から豪快に食らう熊谷さんと、苺をそっとよけて最後に食べる戸田さん。昔は、熊谷さんみたいな人がタイプだったけれど、今は断然、戸田さんみたいな人がいい。